福岡地方裁判所小倉支部 昭和47年(ワ)498号 判決 1973年6月13日
主文
被告らは連帯して原告ら各自に対し、金二、一一二、九七〇円およびこれに対する昭和四五年一一月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
原告らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用は四分し、その一を原告らの、その余を被告らの各負担とする。
この判決は一項に限り、原告らそれぞれにおいて被告らそれぞれに対し、金五〇〇、〇〇〇円の担保を供するときは、その被告に対し、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求める裁判
(原告ら)
被告らは連帯して原告ら各自に対し金二、八四五、六七五円およびこれに対する昭和四五年一一月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言。
(被告ら)
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決。
第二当事者の主張
一 原告らの請求原因
(一) 本件事故の発生
被告室好彦は昭和四五年一一月一三日午後二時三〇分頃普通貨物自動車(以下被告車という)を運転して八幡方面より直方方面に進行中、北九州市八幡区馬場山二七九の一番地香徳寺前国道二〇〇号線上において訴外亡築山忠之(以下訴外忠之という)に同車を接触させ同訴外人を死亡させた。
(二) 被告らの責任
1 被告室は、前記日時場所において被告車を運転進行中、前方五〇メートルの地点に訴外忠之がその友達といるのを発見し、その友達の一人が左から右へと横断したりするのを見ていたから、このような場合忠之が次に横断することは十分に予見可能であり、従つて警音器を鳴らして注意を与えるとか同車を停止させて同人を横断させるとか、徐行するなどの処置をとるべき注意義務があるのに、同被告は右処置を何らせずわずかにスピードを落したのみで漫然と運転進行したために進行方向左から右へ道路を横断しようとした訴外忠之に被告車を接触させたものである。よつて被告室は民法七〇九条によつて右事故による損害を賠償すべき責任がある。
2 被告山本学は、被告車の所有者であり、かつ、被告室が被告山本に雇傭されその業務に従事中に本件事故が発生したものであるから、自賠法三条により右事故による損害を賠償すべき責任がある。
(三) 損害
1 訴外忠之の逸失利益
訴外忠之は死亡当時七才であつたが、労働省労働統計調査部の賃金構造基本統計調査「賃金センサス」によれば、昭和四六年度全産業常用労働者男子一人当り平均一カ年の給与額は、一、一七二、二〇〇円であるから、訴外忠之は生存していれば就労可能年令に達した後、右金額の半分を生活費として控除した残五八六、一〇〇円の総収入を得たことになる。
次に右訴外人の就労可能期間は二〇才より六〇才までの四〇年間が相当であるので、ホフマン式計算方法によりその中間利息を控除すると、就労可能最終年令(六〇才)までの年数に対応する系数二五・五三五三より就労可能開始年令(二〇才)までの年数に対応する系数九・八二一一を差引いた一七・七一四二を前記得べかりし年間純収入五八六、一〇〇円に乗ずると一、〇三八、二九二円となる。
従つて訴外忠之の逸失利益は右一〇、三八二、二九二円であるところ、原告らは同訴外人の父母であるから相続によりその二分の一である五、一九一、一四六円宛を取得した。
なお、右逸失利益の算定は事故時でなく昭和四六年度の統計を基にしているが、事故時を基準として損害額を算定するにしろ、この算定資料は、弁論終結までにあらわれた一切の証拠資料によつて基準時以後に増額が確実視されるものについても考慮してよいと思う。
2 訴外忠之の慰藉料
訴外忠之本人の慰藉料は一、五〇〇、〇〇〇円が相当であり、原告らはそれぞれ七五〇、〇〇〇円宛右慰藉料請求権を相続により取得した。
3 原告らの慰藉料
原告ら固有の慰藉料はそれぞれ七五〇、〇〇〇円が相当である。
4 従つて原告らの損害賠償請求権はそれぞれ合計六、六九一、一四六円であるが訴外忠之側の過失を考慮して右金額に対する三〇パーセントを減少することとし、そうすると、原告らの有する請求金額はそれぞれ四、六八三、八〇二円となるが、そのうちそれぞれ四、四四三、七五一円を請求する。
5 弁護士費用
原告らは弁護士である本件原告ら訴訟代理人らに本訴の提起追行を委任し、勝訴の場合には原告ら各自が各訴訟代理人に五〇、〇〇〇円宛支払うことを約したので、原告らの弁護士費用はそれぞれ三〇〇、〇〇〇円である。
6 損害の填補
原告らは自賠責保険によつて前記損害に対しそれぞれ一、八九八、〇七六円の支払を受けた。
(四) よつて、被告らに対し、連帯して、原告らそれぞれに対して、前三項(四)(五)記載の損害合計四、七四三、七五一円から同項(六)記載の填補分一、八九八、〇七六円を差引いた残二、八四五、六七五円とこれに対する事故の翌日である昭和四五年一一月一四日から完済まで年五分の割合による遅延損害の支払を求める。
二 被告らの答弁および主張、抗弁
(一) 請求原因(一)項の事実は認める。
同(二)項1の事実中被告室の過失は否認し、同2の事実は認める。
同(三)項中6は認め、その余は知らない。
(二) 過失相殺
1 被告室は、進行方向前方五〇メートルの道路左側に、訴外忠之と友人一名(子供)がいて、右友人が車両交通の絶えた際、左側から右側へ道路を横断したのを見たが、訴外忠之は右友人の後を追う素振りはなく、また反対方向からの自動車が続いて進行して来て道路右側へ横断できる状況でなかつたうえ、訴外忠之のいた道路左側部分は道路左側端より約一・五ないし二メートルの巾で約三〇メートルに亘つて空地があり訴外忠之は道路左端より約七、八〇センチメートル左に寄つた右空地内地点で被告車と同一方向を向き同車と平行して、片足で、いわゆるケンケン飛びをして遊んでいた。被告室は訴外忠之が道路右側に移つた友人には全く関心がなく後を追う気配もなく、かつ十分の余裕のある道路左方でケンケン遊びに熱中している様子なのでよもや同訴外人が道路右側に走り出すことはなかろうと判断して同訴外人との間に約二メートルの間隔を置いて時速約二〇ないし三〇キロメートルに減速し注意しつつその横を通過しようとしたところ、被告車の先端が同訴外人から約一メートル手前の地点に差しかかつた際、突然同訴外人が道路右側に向つて飛び出したため、急停車の措置をとつたが右訴外人は既に自ら被告車の左側、運転台後方(車体の中央よりやゝ前付近)の燃料タンクの金具に接触して転倒し、死亡するに至つたものである。
右状況のもとでは訴外忠之と被告室の本件事故の発生に対する過失割合はそれぞれ六〇パーセント、四〇パーセントとみるのが相当である。
よつて被告らは右割合による過失相殺を主張する。
2 仮に訴外忠之につき過失相殺が認められないとすれば、同訴外人の親権者で監護義務者である原告らには次の過失があるのでこれをいわゆる被害者側の過失(四〇パーセント)として訴外忠之の損害の算定につき相殺するよう主張する。
原告らは本件道路が車両交通の激しい場所であり、一般に幼児の遊びバ所ではないことを知りながら訴外忠之に対し、日頃十分な訓戒、監督をしていなかつたため同訴外人が友人と遊びに熱中して道路に飛び出し死亡する結果となつたのであり、原告らにもこの点で過失があり右過失は原告ら各自につき四〇パーセントが相当と考える。
3 本件事故による原告ら固有の慰藉料については、訴外忠之の親権者である原告らにも前記過失(原告ら各自につき四〇パーセント)があるので、これを斟酌されるべきである。
(三) 損害額について
1 訴外忠之の逸失利益の算定に当り、七才から二〇才までの養育料(月額五、〇〇〇円ないし一〇、〇〇〇円)の現価(後記八八三、八九九円)を控除すべきである。
2 仮に養育費の控除は受益当事者が異なるので認められない場合原告ら固有の慰藉料から訴外忠之の七才から二〇才まで一三年間、一カ月平均七、五〇〇円の割合による養育料総額一、一七〇、〇〇〇円をホフマン式系数により中間利息を控除した現価八八三、八九九円の各二分の一(養育費は原告らが平等に分担すると推定される)である四四一、九四九円を損益相殺により控除すべきことを主張する。
3 訴外忠之の慰藉料についても同訴外人の前記過失が斟酌されるべきである。
(四) 弁済関係
厚告ら自陳のとおり原告らは損害賠償として既に各自一、八九八、〇七六円を受領している。
以上主張の、過失相殺、弁済を考慮すれば原告らの損害の差引残額は零となる。
よつて原告らの本訴請求は失当である。
三 被告らの主張に対する原告らの答弁
過失相殺に関する主張事実は否認する。本件事故発生現場はもよりの横断歩道から約七〇メートル位はあり横断歩道の付近とはいえず、訴外忠之は友人に続いて本件道路を横断しようとしていたもので、歩行者が集団となつて横断していた場合に当り、これらに訴外忠之は幼児であること、被告室の前記過失内容などを考えると、本件事故の発生に対する訴外忠之と被告室の過失割合は一対九になるべきであるが、少くとも三対七は下らない。
第三立証〔略〕
理由
一 請求原因一項の事実は当事者間に争いがなく、同事実と〔証拠略〕によれば、被告室は被害車を運転して本件事故の発生した八幡区大字馬場山二七九の一番地先付近国道二〇〇号線上を八幡方面より直方方面に向け時速約四五キロメートルで進行中、前方約五〇メートルの進行道路左側白線付近を訴外忠之(当時七才)外一名の児童が、片足とびするような状態で前後して同被告と同一方向に歩行しているのを認め、それから約二六メートル前進した地点で右二名の児童のうち訴外忠之でない方の児童(以下単に児童という)が進路上を進行方向左から右に走つて横断するのを認め少し減速したが訴外忠之が被告車の方向を全く見ていなかつたものの横断することはないだろうと考えて警音器も鳴らさず、アクセルを踏んで加速し時速約三五キロメートルで前記地点より更に約二六メートル前進したところ、被告車の左斜前方約四メートルの地点から同車進路上左から右へ向つて横断のため走り出して来た訴外忠之に気付き急制動の措置をとつたが間に合わず、同車左側中央付近の燃料タンク部分を同訴外人に衝突させて転倒させ、同訴外人をして頭蓋骨々折、骨盤骨折等の傷害により翌一四日北九州市八幡区春の町済生会八幡病院において死亡するに至らせたこと、右衝突地点は本件道路上の最寄りの横断歩道より約六〇メートル離れた地点であること、ところで訴外忠之が前記横断のため走り出した地点付近には、被告車の進行方向左側道路部分の左端から約二メートルの幅員で、車を停めて休憩する空地があり、また被告室が前記児童が横断するのを認めた地点では、被告車と訴外忠之との横の間隔(両者が併行した場合)が約二メートルはあり、更に、訴外忠之は右児童にすぐ続いて横断しようとしたものではないけれども、右児童が横断するのを被告室が認めてから被告車が約二六メートル進行するまで(訴外忠之が走り出すまで)の間に、訴外忠之は右斜前方へ約三メートル前進し、同訴外人と被告車との横の間隔(両者が併行した場合)も約一メートルになつていたのであつて、従つて被告室が右児童の横断を認めた当時、訴外忠之が片足とびに熱中していて道路を横断する気配が全く感じられないというような状態ではなかつたこと、以上の事実が認められ、被告室本人尋問の結果中右認定に抵触する部分は前掲各証拠に対比して採用できず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
右認定したところによれば、前記児童が進路前方約二六メートルの地点を進行方向左から右へ走つて横断するのを認めた際、先に訴外忠之が同児童と相前後して歩行しておりまた同訴外人が自車に気付いた様子がなかつたのであるから、同訴外人も右児童の後を追つて、道路を横断するため進路上に走り出すことは予見できたというべく、従つて被告室としては、訴外忠之の動静を注視し警音器を鳴らして自車の接近を知らしめるとか、減速徐行するなどの処置をとりもつて同訴外人との接触衝突などの危険の発生を未然に防止するべき注意義務があるのにこれを怠り、同訴外人が横断しないものと軽信して警音器も鳴らさず時速約三五キロメートルで進行した過失により本件事故を惹起したものというべきである。よつて被告室は民法七〇九条により本件事故による損害を賠償すべき責任がある。
被告山本が被告車の所有者であり、同被告に雇傭される被告室がその業務に従事中に本件事故を惹起したことは当事者間に争いがないので、被告山本は自賠法三条により本件事故による損害を賠償する責任がある。
また、〔証拠略〕によると本件事故発生地点は国道でトラツクなどの通行も少くないことが認められ、これと前記認定事実によればこのような道路を横断歩道でもないのに安全を確認せずに走つて横断することがきわめて危険であるから、訴外忠之としては右の危険を予測し安全を確認してから横断を開始するべきであつたというべきところ、〔証拠略〕によると訴外忠之は当時七才で成績も普通の小学校一年生であり、家庭および学校においてかなりの交通安全教育を施されていたことが認められるのであるから、同訴外人は道路の安全を確認しないで交通量の少くない道路を走つて横断することが危険を招来するとの事理を弁識してこれに対処して行動し得る能力を有していたと考えられ、従つて同訴外人にもこの点の注意を欠いて前記のように被告車の方向も見ずに横断のため走り出した点で本件事故の発生に対して過失があるというべく、右過失は本件事故による損害の算定につき斟酌すべきである。そして訴外忠之の右過失割合は前記のような同訴外人の年令、前記事故発生当時の状況、被告室の過失内容等を考慮すれば、三割とみるのが相当である。
二 損害
(訴外忠之の財産上の損害)
(一) 逸失利益
(1) 〔証拠略〕によれば、訴外忠之は事故当時七才の健康な男子であつたことが認められ、厚生省第一二回生命表によると七才の男子の平均余命年数は六二・六八であるから、訴外忠之は六九才余になるまで存命し、少くとも二〇才から六〇才に達するまでの四〇年間は稼働して収入をあげ得たであろうと推認される。
そして労働省労働統計調査部編昭和四六年「賃金センサス賃金構造基本統計調査報告第一巻第一表」によれば、同年七月当時の全産業男子労働者一人当りの平均月額賃金給与額および平均年間賞与その他の特別給与額は、それぞれ七六、九〇〇円および二四九、四〇〇円であるから、その一カ年の平均収入は一、一七二、二〇〇円となり、なお訴外忠之の生活費としては右収入の五割を要するものと考えるのが相当であるので、これを右収入から控除した五八六、一〇〇円が同訴外人において二〇才から六〇才に達するまでに得たであろう年間純収入となる。そして右年間純収入四〇年分につき、ホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して事故当時の現価を求めると、次のとおり九、二一〇、〇九二円(円未溝切捨て、以下同様)となる。
586,100円×15.7142(就労最終年令までの年数53年に対する系数25.5353より就労開始までの年数13年に対応する系数9.8211を差引いた系数)=9,210,092円
(2) なお逸失利益の認定については、その他の損害額の認定と同様事故発生時を基準としてなすべきものではあるが、その損害額認定の統計資料としては、その後弁論終結までにその数値が変更(増額)された場合、弁論終結までにあらわれた一切の証拠資料によつて事故当時右変更(増額)が確実視されたと認められる以上変更(増額)された時点以降の逸失利益の算定を変更(増額)された統計数値に基づいて算出するのが相当と考えられる。そして本件については、過去数年間の労働者の平均賃金の上昇が極めて高く、訴外忠之が稼働可能年令に達したとき平均賃金が少くとも前記昭和四六年七月当時の平均賃金程度に変更(増額)することは、〔証拠略〕に照らし、事故当時も確実視し得たところであると認められる。従つて本件については前記昭和四六年の統計を用いて訴外忠之の逸失利益を算定した。
(二) 損益相殺
ところで訴外忠之は本件事故当時から二〇才に達するまでの一三年間(端数切上げ)にわたりその養育料としての相当の支出を要すると考えられる。右養育費は訴外忠之の両親である原告らの負担すべきもので、右訴外人が本件事故によりその出費を免れたものとはいえないのであるが、右養育費相当の出費は、訴外忠之が前記収入を得る前提である稼働能力を取得するための必要経費ともいうべく、同訴外人の両親である原告らが右収入相当の逸失利益を相続した一方で、本来支出すべき養育料の出損を免れることは公平を欠き不当であることを思えば、訴外忠之の損害の算定に当つては右養育費を控除するのが衡平の理念に適合し相当である。
そして右養育費としては、訴外忠之が二〇才に達するまでの一三年間、一カ月あたり一〇、〇〇〇円を要するものとみるのが相当であり、その年額一二〇、〇〇〇円を基準にホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して事故当時の現価を算出すると、次のとおり一、一七八、五三二円となり訴外忠之の損害としては前記逸失利益から同金額を控除することとなる。
120,000円×9.8211(13年間に対応する系数)=1,178,532円
(三) 過失相殺
本件事故の発生については被告忠之にも三割相当の過失があることは前記のとおりである。
(四) そうすると、前記(一)の金額から同(二)の金額を控除し、同(三)の過失相殺をすると、訴外忠之は本件事故により被告らに対し五、六二二、〇九二円の逸失利益の賠償請求権を取得したことになる。
(訴外忠之の慰藉料)
訴外忠之の慰藉料は本件にあらわれた一切の事情に、本件事故の発生に対する訴外忠之の前記過失を斟酌すれば一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。
(原告らの相続)
〔証拠略〕によると、原告らが訴外忠之の父母として同訴外人の権利義務を相続により承継したことが認められ、そうすると原告らは訴外忠之の前記逸失利益および慰藉料請求権合計六、六二二、〇九二円の二分の一である三、三一一、〇四六円宛を取得したことになる。
(原告らの慰藉料)
原告ら固有の慰藉料は、本件事故の発生に対する訴外忠之の前記の過失を斟酌すると各五〇〇、〇〇〇円が相当である。
被告らは、訴外忠之の親である原告らにも監督上の過失があり、この過失により過失相殺すべき旨主張するが、原告築山忠彦本人尋問の結果に対比すると、(訴外忠之の前記過失に競合して)原告らに、監督上の過失があつたと認めるに足る証拠はないので、右主張は採用できない。
三 損害の填補
原告らが本件事故による損害につき自賠責保険によりそれぞれ一、八九八、〇七六円の支払を受けたことは当事者間に争いがない。
四 右みてくると原告らは各自被告らに対し、訴外忠之から相続した前記請求権と自己固有の慰藉料との合計三、八一一、〇四六円より右填補分を差引いた残一、九一二、九七〇円の損害賠償請求権を取得したところ、原告らが弁護士である本件原告ら訴訟代理人に本訴の提起追行を委任し原告ら主張のとおりの費用等を支払う旨約したことが〔証拠略〕によつて認められるが、本件事案の難易その他本件にあらわれた諸般の事情に鑑み本件事故と相当因果関係ある弁護士費用は原告ら各自につき二〇〇、〇〇〇円を相当と認める。
五 以上によると、被告らは原告ら各自に対して前項記載の損害合計一、九一二、九七〇円に弁護士費用を加えた合計二、一一二、九七〇円およびこれに対する本件事故発生の日の翌日である昭和四五年一一月一四日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。
よつて原告らの本訴請求は右認定の限度で正当であるからこれを認容し、その余は理由がないものとして棄却すべく、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九二条、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 武田多喜子)